UGCとブランドの「共創」が加速する背景とは
近年、ブランドとユーザーの関係性は単なる「顧客と提供者」という枠を超え、双方向的な「共創(コ・クリエーション)」へと進化しています。特にサステナブルブランドにおいて、この流れは顕著です。従来の広告ではなく、ユーザー自身がブランドの一部として体験を共有し、語り、時に製品開発にも参加する。このような動きの中心にあるのが、UGC(User Generated Content)です。
InstagramやTikTokをはじめとするSNSでのレビュー投稿、YouTubeでの開封動画、あるいはX(旧Twitter)での購入報告など、UGCは今や消費者行動のあらゆる段階に影響を及ぼしています。とりわけサステナブルブランドは、「共感」や「価値観の共有」をベースに構築されることが多く、UGCとの親和性が高いといえるでしょう。
POINT サステナブルブランドは「共感」を軸にしており、UGCがブランド価値の可視化と拡散に直結する特性を持つ。
製品開発フェーズで活躍するUGCの新たな形
近年では、UGCを「完成品に対する反応」だけでなく、「開発段階におけるフィードバックループ」として活用する動きが広がっています。たとえば、あるエシカルファッションブランドでは、試作品の画像を先行してコミュニティに公開し、色や素材に対する意見を収集。結果、ユーザーからの提案が新たなカラーバリエーションとして正式採用されました。
このような参加型の製品開発手法は、クラウドファンディングモデルとも似ていますが、より継続的かつ密接にブランドとユーザーが連携している点が特徴です。「この製品は私が一部関わった」という感覚が、ファンのロイヤルティを高め、再購入率やLTV(ライフタイムバリュー)にも好影響を与えます。
POINT UGCは「完成品のレビュー」にとどまらず、製品開発の初期段階から価値あるインサイトを提供する手段へと進化している。
ストーリーテリングの再構築におけるUGCの威力
サステナブルブランドにとって、単なる商品スペックではなく「なぜこのブランドが存在するのか」というストーリーこそが最大の武器です。そして、UGCはそのストーリーを多様な角度から再構築し、広げる力を持っています。
例えば、廃棄予定だった素材を再利用したバッグブランドが「お客様のBefore/After写真募集キャンペーン」を行ったところ、予想以上に感動的な投稿が集まりました。ある投稿では、同ブランドのバッグが「失業中の私に自信をくれた」と綴られており、それが再びブランドの広告素材として活用されました。
このように、UGCはブランドの公式ストーリーだけでは語りきれない「リアルな文脈」を追加し、ブランドの社会的価値をより深く伝えることができます。
POINT UGCは“リアルな物語”を通してブランドの存在意義を再構築し、より強固な支持基盤を形成する。
UGC活用における留意点と透明性の重要性
UGC活用のメリットは多い一方で、ブランドが一方的に利用する姿勢では信頼を失うリスクもあります。投稿者の許諾を得ること、出典を明記すること、意図的な操作をしないことなど、透明性を担保する仕組みが重要です。
また、UGCの選定においても、フォロワー数や見栄えだけでなく、「共感を呼ぶ内容かどうか」「ブランド理念と一致しているか」を重視することが、長期的なブランド価値の醸成に繋がります。
POINT 透明性と正当なクレジット付与は、UGC活用における信頼構築の要。
UGC×サステナブルブランドの今後の可能性
今後、AIとUGCの融合、ユーザー参加型メタバース体験など、UGC活用はさらに進化すると見られています。しかし最も本質的なのは、ユーザーとの関係を「消費」ではなく「共創」へと転換する視点です。
特にサステナブルブランドは、ユーザーの意志と共鳴し、社会課題と向き合う姿勢が問われるため、この“共創力”がブランドとしての信頼性を測る物差しとなるでしょう。
サステナブルブランドにおけるUGCの真価は 単なるSNS拡散ではなく、ユーザーとの共創を通じて、社会的意義・共感・ブランド信頼を構築することにある。