Z世代の消費行動に見る「モノよりコト」への価値転換
サステナブルブランドを取り巻く潮流は、近年大きな転換期を迎えています。なかでも注目すべきは、Z世代と呼ばれる1990年代後半から2010年ごろに生まれた若年層の「体験重視」傾向です。彼らにとっての「良い商品」とは、単なる機能性やデザインではなく、その背景にあるストーリーや体験価値に基づいて評価されることが多くなっています。
「所有」よりも「体験」を重視する背景とは?
Z世代はデジタルネイティブとして育ち、SNSを通じて常に情報とつながっていることが特徴です。そのため、自分が買ったモノを「誰かと共有できるか」「発信に適しているか」といった視点で判断する傾向が強まっています。
また、地球環境問題や経済格差などへの関心も高く、単なる大量消費に疑問を持つ世代でもあります。だからこそ「この商品はサステナブルであるか」「共感できるストーリーがあるか」が重要になってくるのです。
POINT Z世代の消費は、所有よりも意味と体験に重点を置く。ブランドは商品そのものより「ブランドとしての姿勢」が問われる。
「体験価値」とサステナブルブランドの接点
たとえば、アップサイクル素材を使ったアパレルブランドが、「素材の出所」「加工プロセス」「作り手の顔」といった背景を丁寧に開示したうえで、その物語を体験として伝えることで、Z世代から高い支持を得るケースが多く見られます。
また、購入体験にワークショップを取り入れたり、商品にストーリーブックや認証カードを添えるなど、五感に訴える演出を通じて「消費=体験」として定義し直す試みも増えています。
Z世代に響く「共創型ブランド体験」
Z世代は受動的な顧客ではなく、「ブランドと共に何かをつくる」という姿勢を歓迎します。そのため、製品開発にコミュニティを巻き込んだり、商品レビューやSNS投稿を活用してユーザー自身をブランド体験の一部に組み込む仕組みが有効です。
たとえば、ユーザーの投稿から実際に新商品が誕生する仕組みや、ユーザーの着こなしがブランドの公式ビジュアルに採用されるといった「共創」の形は、まさにZ世代が共感するエシカルな消費体験と言えます。
POINT 体験の中心に「共創」があることで、ブランドは単なる供給者から「共感の場」へと進化する。
物理的所有から「記憶」と「意味」へ
Z世代の多くは、あえて「所有しない選択」をする場面も増えています。たとえば、洋服のレンタルサービスや、サブスクリプション型の雑貨体験など、一定期間だけ使って体験するというスタイルが支持されるのもその証拠です。
これは、モノを通じて「どんな時間を過ごせたか」「何を感じたか」という記憶や感情が最終的な価値であるという思想に近く、サステナブルブランドにとっても新たな提供価値を設計する手がかりになります。
体験価値の可視化が信頼構築の鍵に
こうした「意味重視」型の消費行動に対応するには、ブランド側も製品スペックだけでなく、環境・倫理・ストーリーを一貫して「体験」として可視化しなければなりません。
商品パッケージにQRコードを設け、製造背景や農家の声、CO2排出量などをリアルタイムで閲覧できる設計や、商品の履歴がブロックチェーンで管理されているなど、デジタル技術を使って体験を補完する仕組みは、今後の必須要素といえるでしょう。
事例:Patagoniaの体験型アプローチ
アメリカ発のサステナブルブランド「Patagonia」は、環境保護活動と連動した体験型プロジェクトを数多く展開しています。製品購入者を対象に、ビーチクリーンイベントへの参加を呼びかけたり、商品購入者に再利用・修繕キットを無償配布するなど、製品が生活と社会をつなぐ“体験の起点”となるよう設計されています。
このように、「体験」そのものがブランドの価値として成立する構造は、Z世代との接続性が高く、同様の設計は日本の中小ブランドでも十分に導入可能です。
※Z世代の体験志向はブランドにとって「物語性・共感性・可視性」という3つの軸で構築される新しい価値戦略の出発点となる。